次の100年の
「ふつうの学校」をつくる

古川 理沙

私立新留小学校設立準備財団 共同代表
NPO法人SELF 共同代表理事

Field|新留

#食とことば #学びの構造転換 #学校を起点とした地域再生

思考や意思決定までもが外部化されつつある現代に、教育はどうあるべきか

これからの教育に求められているのは、正解を早く見つける力ではなく、自分を取り巻く世界をどう捉え、何を手がかりに判断し、どのように行動を選ぶのかその基盤となる人間としての力を、どのように育てるのかという問いです。

この問いは、教育現場に限らず、不確実な環境下で意思決定を担う企業や組織においても、既に顕在化している課題です。

私たちは、その鍵が、10歳前後までの学びにあると考えています。

この時期に、子どもたちが自分の暮らしを構成する人・物・出来事と直接関わり、対象に働きかけ、反応を受け取り、考え直すという循環を重ねることで、学びは断片的な知識ではなく、自らの人生を生き抜いていくための判断の土台として内在化されていきます。

公教育の枠組みの中で、システムチェンジを起こす

私たちは、こうした学びは、学習指導要領に基づく公教育の枠組みの中で、十分に実現可能だと考えています。
それは、新しい教科や特別な制度を導入することではなく、学びの設計と日々の関わり方を見直すことによって成立するからです。

人間が、自分を取り巻く世界とどう関係を結びながら生きていくのか。
その問いに、理念ではなく、実際の教育の場から答えを示すことが、システムチェンジへの大きな一歩になると考えています。

私たちはその実践の場として、鹿児島県姶良市の旧・新留小学校を舞台に、新たな小学校(学校教育法第1条に定められた私立小学校)を設立します。

なぜ、この地に新たな学校をつくるのか?

日本では現在、毎年およそ450校もの学校が廃校になっています。
一方でそのような地域にある学校は、本来、知識を伝達する場としての役割をこえて、地域の自然や文化、人の営みと結びつきながら、次の世代を迎え入れ、育んできた場所でもありました。

私たちは、この巨大な余白を、AI時代における「人間の学び」を再発明し、これからの学びのあり方を実践しうるフィールドとして捉え直したいと考えています。

この地で、地域の人々とともに学校をひらき直すことは、単に「教育の場を残す」ことではありません。学校を起点に、人・文化・産業・自然を結び直す「社会基盤の再設計」です。

ここで生まれる実践知は、一つの学校に閉じるものではなく、同じく学習指導要領に基づいて活動する全国の公教育や企業等と共有していきます。

新留小学校からはじまる「学びのアップデート」は、どの地域にも再現可能な、次の100年の学びの原型を形づくるR&Dプロジェクトです。

「食」と「ことば」を土台に、身体から湧き上がる学びをデザインする

AIが知識を扱える時代において、人間の学びは「何を知るか」から「どう身体で世界と関わるか」そして「どう行動できるか」へと問い直されています。

産業革命と情報革命を経て、私たちの暮らしは便利で豊かになった一方で、自然やコミュニティ、そして身体感覚から少しずつ切り離されてきました。

「食」と「ことば」を学習環境の土台に据え、人・自然・知性が切り離されることなくつながる学びの環境をつくります。

食は、身体を自然界と接地させ、共に食べることで人とのつながりを生み出し、ことばは、身体の経験と概念を結びつけ、対話を通して、知性を社会へとひらきます。

人間にしかできない「身体を通した学び」を支える公教育をデザインしたいと思います。

人が人らしく、幸福に生きられる地域を

新留小学校が大切にしているのは、地域を「教材として使う」ことではなく、子ども自身が生活者として自分を取り巻く世界と関係を結ぶことです。
子どもが認識できる世界の広さは、学年とともに広がっていきます。
新留小学校では、 学校という共有地(コモンズ)を起点に、
・低学年:自分の暮らしに直結する半径300m
・中学年:地域の人や生業が見えてくる半径3km
・高学年:自然・産業・社会構造を捉える半径30km
というように、理解できる範囲を無理なく広げていく設計をしています。
理解が深まるにつれて、地域は単なる風景ではなく、自分から関わっていく対象になります。
こうした学びが積み重なることで、学校を中心に、人・文化・産業・自然が結び直され、地域の資本が内側で循環する構造をつくります。
私たちはこの在り方を「再校(リジェネラティブ・スクール)」と呼び、学校を、学びの場であると同時に社会基盤を更新するためのハブとして再定義します。