未来の子どもたちが
恐れずに挑戦できるまちへ
大井 健史
株式会社エーゼログループ 錦江町支社長
Field|錦江
#ローカルベンチャー #挑戦と応援の連鎖 #AI

自然と人が育む新たな挑戦
鹿児島県大隅半島の南端に位置する錦江町は、人口およそ6,000人の小さなまちです。海・山・川すべてがそろった豊かな自然に恵まれながら、毎年200人以上の人口が減少し、高齢化率は県内ワースト2位という厳しい現実に直面しています。
一方で、逆境を逆手にとって、全国に先駆けて廃校を活用したサテライトオフィスを整備。現在は6社の多様な企業が進出しています。さらに移住者と町民が協働で立ち上げたゲストハウスから新たなコミュニティが生まれ、それらの取り組みが呼び水となって、移住者や地域おこし協力隊として独自の挑戦を行う人も生まれてきました。
豊かな自然資本を活かして各産業で前向きに働く人たちがいる、その上で新たなチャレンジの機運が高まっています。

役場から始まる、地域の変化
小規模の自治体では、民間の担い手が限られる分、暮らしや地域づくりにおいて行政が担う領域が広くなります。しかし人口減少に伴って課題は増え続け、行政の役割が拡大する一方で、採用難により人材不足が深刻化しています。既存事業の廃止も容易ではなく、職員の皆さんは「やらなければいけない業務」が増えている状況です。
また、新たな挑戦を支えたいという思いがあっても、公平性や地域内の関係性への配慮から行政がリスクをとって個人を応援することは難しく、そもそも挑戦したい人と出会い、対話する場も限られています。
人口が減ることは受け止めつつも、考える力のある自立した「筋肉質なまち」をどのように実現していくか。そして、まずは役場が変わることから始められないか。町長を筆頭とした町の皆さんとともに、そうした問いに向き合っています。

挑戦と応援が連鎖する土壌をつくる
2023年、エーゼログループは錦江町に支社を設立し、役場と連携して地域に「挑戦と応援の連鎖」を生み出す取り組みを進めています。
そのひとつが、「ローカルベンチャースクール」というプログラムです。錦江町で事業の立ち上げや拡大を目指す挑戦者を支援するもので、経営者だけでなく役場職員や地域事業者もメンターとして参画するのが特徴です。地域ぐるみで挑戦を後押しすることで、この3年で5名の挑戦者が新たに移住することになりました。
また、挑戦を応援する余白を生むために、役場内に「AI検証班」という課横断のチームの立ち上げを支援しています。プロダクト開発を目的とせず、AI技術を前向きに捉え、協働しながら活用できるチームづくりを目指し、3名の職員が週1日、AIによる業務改善のPoCに従事しています。

人口減少下でも価値創造できる筋肉質なまちへ
こうした取り組みの積み重ねによって、行政に余白が生まれ、限られた職員数でもよりクリエイティブで未来志向の取り組みを増やしていけるのではないか。
その結果として、住民の方々が自分らしく、幸せに生きられる機会を増やしていけるのではないかと考えています。
さらに、職員の皆さんが挑戦者と対話し、挑戦を後押しする経験を積み重ねることで、行政や民間といった立場や業種の枠を越えた対話の文化が育まれるのだと思います。
そうした文化のある町では、新たな挑戦が生まれやすくなる。その先にこそ、目指す「筋肉質なまち」の姿があるのだと思います。

未来の子どもたちへ希望をつなぐ
新たな挑戦が生まれることで、今の暮らしがよくなるだけでなく、その先に未来の子どもたちが希望を持てるまちを目指しています。
そのためには、大人が希望を持って事業に取り組む姿、互いに応援している姿を見せることが、何より大事なのではないか。時間はかかるかもしれませんが、その文化を一歩ずつ育んでいきたいと思います。
そして、何かやりたいと思ったときに「錦江町ならできるかも」と思える子どもたちが帰ってきて、その熱気にいろんな人が巻き込まれていく。150年後、そんな未来が当たり前に続いているまちを、この地に遺していきたいと考えています。
