移動手段に留まらず、
地域の価値を最大化させる
「ローカル鉄道」の磨きこみ
中原 晋司
中原水産株式会社 代表取締役
Field|枕崎・指宿
#楽しく世界をだしまみれ #水産会社の鉄道事業 #地域資源を活用した事業化

日本一のお茶とかつお節ライン「指宿枕崎線」
鹿児島県薩摩半島南部は「南薩」と呼ばれ、JR日本最南端のローカル鉄道路線である指宿枕崎線が鹿児島市~指宿市~南九州市~枕崎市にあります。南薩は食品生産と観光が盛んです。食品に関してはかつお節や緑茶が日本一の生産量を誇る大産地で、鹿児島県は県別で両方日本一、市町村別でも生産量においてかつお節1位は枕崎市で2位は指宿市、緑茶1位は南九州市となっております。また観光に関しては、火山による海山の景色や温泉の恵みもあり、指宿では砂蒸し温泉など、ユニークな温泉を楽しむことができます。一方、沿線の人口は減少しており、鉄道やバスなど公共交通路線の廃止や減便は進んでおり、指宿枕崎線の枕崎~指宿間においても、今後どのように活用していくかという協議が鉄道会社と沿線関係者の間で始まっています。

「ローカル鉄道」が地域にもたらす価値はあるか?
現在、全国の「ローカル鉄道」が廃線の危機に瀕しています。路線・区間別の採算を見ると、赤字額が大きな箇所が多く、それだけを見ると存続が厳しいと考えるのも仕方がない部分もあります。しかし、鉄道があることでのメディア取材・掲載における広告宣伝効果や、鉄道を活用する観光コンテンツの作りこみによる経済効果など、鉄道は地域の広告塔としてまだまだ活用できる余地があります。現在は行政や鉄道会社の間で路線活用に関する協議が行われて始めておりますが、地元の民間企業がそこに積極的に関わり事業や雇用を生み出すことで、地域の足であるローカル鉄道の維持や、地域の経済的発展に寄与できるのではないかと考えております。

地元水産会社が取り組む「鉄道事業」
弊社(中原水産)は、枕崎に80年近く続く水産会社ですが、現在企業理念を「地域資源を活用した事業展開を通じて、地域を元気にし、住む人にとって誇りが持てる地域作りに貢献する。」と定め、枕崎の地域資源である「かつお節(おだし)事業」に加え、「鉄道事業」を展開しております。具体的には、列車や駅舎など、指宿枕崎線を活用したイベント列車や体験プログラムの企画・実施、またルートマップ作成や地域住民向けのイベント・発信活動などを行っています。その際、対価(報酬)を受けられるようなアクションを提供することにこだわり、事業として売上・利益を出し、雇用を生み出すことで民間企業の事業として継続できることを目指しています。

地域で支え、活用できる「ローカル鉄道」と「公共交通」の確立
ローカル鉄道の問題は、地域の衰退にも密接に繋がっていると考えており、「地域に住む・来てもらうための魅力づくり」と「地域内外の移動手段の充実」の両面を目指しています。鉄道に関しては、弊社の活動に加え、弊社以外の企業や住民における積極的な活動を協業や情報発信などを通じて行っていき、地域の魅力を増しながら鉄道の効果や維持の重要性を地域の方々に実感していただき、鉄道も含めた公共交通の意義や重要性を理解していただこうと考えております。結果、移動手段不足による枕崎・南薩への訪問断念や住民流出を防ぎ、特に子供や若者が枕崎や南薩に住み続けたい、関わりたいと思うような地域にしていきたいと考えております。

地域作りは地元の「想い」から。鉄道を事例にした教訓。
約150年前、明治維新後鉄道は1872年に新橋~横浜間で開業され、その後全国各地に鉄道路線は伸び、荷物や旅客の運搬で重要な役割を果たしましたが、各ローカル鉄道における延伸においては、その地域の方々が金銭的や労務的な負担やリスクもとり、想いを発信して誘致しました。指宿枕崎線や既に廃止された南薩鉄道は、黒豚やかつお節のブランド向上に大いに役立ちました。魅力的な地域作りと移動手段の確保は両輪であり、それは今でも変わらないと思います。
現在、ローカル鉄道に求められる役割は開業当時よりも変化していると思いますが、なぜ開業したのか、開業当初にはどのような役割があったのか、その歴史も踏まえながら、その時代時代に合わせた移動手段も考え活用していく必要性を、後世に残していきたいと思います。
