ローカルゼブラ企業が描く
地域経営の未来

小平 勘太

小平株式会社 代表取締役社長
NPO法人SELF 共同代表理事

Field|湯之元

#ローカルゼブラ #企業の静かな責任 #はたらく街のひらきかた

113年企業の本社移転が起点
—シャッター温泉街 湯之元に芽生える変容

1912年に鍛冶屋として創業した小平株式会社(KOBIRA)は、時代の変化に合わせエネルギー、IT、貿易へと業態を転換しながら114年の歴史を歩んできました。一方、鹿児島県日置市の湯之元地区は、かつて賑わった温泉街でしたが、今では空き家の増加とシャッター街化という課題に直面しています。

私たちは2024年、本社をこの温泉街へ移転しました。単なる拠点移動ではなく、「働く人のウェルビーイング」と「自然資本の回復」が街の魅力を高めるという仮説を立て、地域と企業が共に成長する新しい地域経営のモデル構築に挑戦しています。

企業と地域の「新しい関係性」が導く街づくりの探究

SELF理事で四代目代表取締役の小平勘太が率いるKOBIRAは、2021年に利用料無料のシェアカフェ「Hamapoke」を開設し、街のコモンズとして活用してきました。2024年の本社移転を機に、日置市と「湯之元を世界に誇れるウェルビーイングタウンにする」という連携協定を締結しています。
現在向き合っているのは、行政主導を脱し、生活者を中心に企業・市民が連携して望む未来を創り出す「地域経営」の実現です。地域世帯の50%超を顧客に持つインフラ企業として、経済合理性を超えた「企業の静かな責任」をいかに地域経営へ昇華させるかを問い続けています。

企業と地域の共創からなる「湯之元モデル」の社会実装

湯之元では現在、小平株式会社の挑戦を起点に、行政・地元企業・域外スタートアップ・コミュニティが連携する「地域経営」が芽生えつつあります。具体的には、エリア開発会社「Yunomoto Village」の共同設立をはじめ、2026年にオープンする街の象徴となるオフィスを中心とした複合施設の建設、大企業と協働するネイチャーポジティブ・ラボの始動、分散型ファイナンスの導入計画、街の新しいビジョン「湯之元モデル」作成などがローカルコミュニティを巻き込みながら進行中です。経営と社会性を両立するローカルゼブラ企業群の活動が、街の未来を大きく変えつつあります。これらの取り組みは、日建設計主催の「Future Lens」プロジェクトでも支援対象に選ばれました。(写真はネイチャーポジティブラボの様子)

働くことで街がひらく、人口数万人規模の地方創生スタンダード

私たちが描くのは、10年後に湯之元モデルが国内外の複数都市で横展開され、地方が社会課題解決特にウェルビーイングとネイチャーポジティブの実験都市として機能する未来です。人口数万人規模の自治体において「働くことで街をひらく」コンセプトが定着し、U/Iターンが加速することで、日置市が持続可能性指標で全国トップクラスになることを目指しています。個人が多様な形態で街に関わり、ライフステージに応じた多拠点居住や共同養生が可能な「マルチハブ型ライフデザイン」を実現します。働くことで自然やコミュニティの回復が促され、圧倒的なウェルビーイングを創出される、地方から世界をリードするサステナブルな街のひらき方を提示します。

絶やさぬ「安心と希望の火」と、自然と共生する経営の知恵

KOBIRAの理念は「これからの百年も、地域から安心と希望の火を熾す」ことです。私たちは、150年後の世界に対しても、自然資本が豊かに回復し、人間がその恩恵を享受しながら創造的に働ける「ネイチャーポジティブな街づくりの知恵」を遺したいと考えています。

私たちの祖業である鍛冶屋の原点である「熾す(小さな火を大きくする)」精神を受け継ぎ、企業が短期的な合理性を超えて地域の公共に貢献する「地域経営」の仕組みそのものを、次世代が誇れる歴史的資産として継承していきます。それは、150年先の人々にとっても、変わらぬ安心と挑戦の土台となるはずです。